第1章 【1年前】
少し休んだらすっかり腰の様子も良くなって
歩けるようになったので校内を見て回ることにした。
入学式?休んでる間に終わっちゃいましたよ。
今から特にすることもないし…
しばらく歩き回り、裏庭近くを通ると、聞き覚えのある声が聞こえた
「よしよし、大丈夫だよ~………」
そろり、と少し覗くように見てみると、先程助けてくれた白髪の悪魔さんがいた
「こっちにおいで~。……あっ!」
どうやら念子に構っているようだ。
しかし彼の思いは届かず、念子は走って逃げてしまっていた
「………あと少しだったんだけどなぁ……」
彼は少し落ち込んでいるのを見て
私の足は自然に動いて後ろから近づいていた
真後ろになっても全く気づかない。
ブツブツと呟いている
『…あの。』
「わっ!?えっ?あぁ、もう!びっくりしたぁ~~~………」
『すみません。今朝のお礼を言いたくて…』
お礼を言うのに相手は座ったまま、私が立ったままで上からの目線で話すとは少し失礼か、と思い、私も地面に正座をする
「うん?……あぁ。君か...こんにちは!」
『あ、こんにちわ……その、ありがとうございました…』
「いいんだよ。生徒を守るのが、僕たち教師の役目だからね」
にこ、と目を細めて笑いながら私の頭を撫でる
大きくて、手袋越しに暖かさが伝わってくる先生の手
守ったのは、先生が教師で、私が生徒だったから。
きっと、その他に理由なんてない。
それでいい。
はずなのに…
………私は何故か、
「それ以上」を求めてしまった。