• テキストサイズ

歌姫のguardian

第10章 最終章 最後の歌


*ジャーファル目線*


(・・・・・・まったく、どうして彼女はあんなに可愛いんだ)

文官への頼みごとについての話を片付け、新たな仕事を抱えて部屋へ戻る最中、私はずっと愛しきミルカのことを考えていた。

誰にでも優しく、誹謗中傷など全くしない。御伽話の女神のような女性。
料理も天才的で、一つに束ねた髪は太陽の光そのもののよう。
笑顔が眩しいほどに可愛らしくて、守らずにはいられない、
 
大切な私の・・・・・・婚約者。


実は今回、文官へ頼んだ事というのは・・・・・・彼女へ渡す婚約指輪についての話だった。

彼女には花が似合う。だから花があしらわれた指輪にしたいと考えているのだが、どんな花がいいのかわからなかったので、聞いていたのだ。


花の種類は決まったので、あとは装飾品の加工職人に作ってもらって、渡すだけだ。


彼女の手を取り、指に指輪をはめたら、彼女はどんな反応をするだろうか。

笑うだろうか?いや、彼女は泣き虫だから、きっと泣いてしまうだろう。



そうやって彼女のことを考えているだけで、心は躍るようだった。
もう、彼女は私のものなのだ。早く式を挙げて、彼女を完全に私のものにしたい!


そう思っているうち、早く恋人に会いたくなった私は急いで部屋に戻り、扉を開いた。



そこには彼女が「おかえりなさい」と言いながら微笑んで――――――




いるはずだったのに。


彼女は何処にもいなかった。


「え・・・・・・ミルカ?どこにいるのです?」

私は部屋の中も、近辺も探した。しかし彼女はおらず、名前を呼んでも返事はなかった。


胸騒ぎがして、部屋に戻る。すると、床に何かが落ちていることに気付いた。



彼女の、髪紐だった。

「ミルカ・・・・・・・・・・・・!!」


私は突然姿を消した彼女を探すため、部屋を飛び出した。

彼女は髪紐を寝る前にしか取らない。きっと何か伝えたくて
取ったのだろう。


例えば、襲われたとか。



そう推測すると、もうそうとしか考えられなくなった。
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp