第10章 最終章 最後の歌
私は彼を送り出した後、同じ作業を続けていた。
彼のいないこの部屋は、気持ちのいい風が入らなくなり、少し暑くなっていた。
ると、髪留めが外れかかっているのが見えた。
(いけない。髪を結い直さなくちゃ)
髪留めの紐を、するりと
鏡を見外したその時――――――
「むぐっ・・・・・・!?」
「大人しくしな、お嬢ちゃん」
誰のものか全くわからない、男の人の声が聞こえた。
一体誰!?この部屋は高い位置にあるのに、どうやって入ってきたの!?
そう聞きたかったけど、彼は右手で私の口元を押さえていて、言葉が発せられない。
嫌っ、怖い・・・・・・助けて、ジャーファルさん!!!
抵抗しながら心の中で叫んだが、彼が来る気配はなかった。
「一緒に来てもらうぜ。あと、抵抗するなら殺してやるから大人しくしとくほうがいい」
冷徹な声が、耳元で響く。
驚いたことに、彼は浮遊魔法を使ってここへ来たらしい。
その証拠に、捕まった私の身体が浮いている。
どうしよう、このままじゃ彼が私が捕まったことを知ることができないわ!
焦って手にぎゅっと力を込めると、違和感があった。
そうだ、髪紐―――――――!!
私は窓から出た瞬間に髪紐を部屋へ投げ込んだ。
どうか、彼が気づきますように・・・・・・・・・・・・・・・・・・
恐怖心を和らげるために彼の笑顔を思い浮かべながら、私は手にもう一度力を込めた。