第9章 甘い約束
*ヤムライハ目線*
「王よ、では早速、今日ミルカから聞いた出来事を報告致します」
私は落ち着いた声を保ったまま、今日ミルカの身に起こった出来事を話しだした。
彼女自身が私を慕って、湯浴みの時に話してくれたのだ。
彼女には少し悪いけれども、こんな重大な出来事を王に話さぬことなど出来ない。
「・・・なるほどな。なあ、ヤムライハ」
「はい、何でしょうか?」
「俺は、彼女は何かしらの魔法を使えるんじゃないかと思っている」
王の言うことに一瞬驚いたが、否定は出来なかった。
「・・・その可能性はありますね。彼女を操っていた女は、あのネックレスには膨大な量の魔力があると言っていて、それを狙っていたようです」
「ああ・・・しかし、理解できない単語がある。”儀式”とは、一体何のことだろうか・・・・・・・・・
本当にミルカを生贄にこの国を消滅させる魔法なんて存在するのか・・・?」
「そんな大きな魔法が使えるようなら、彼らはアル・サーメンの一員であってもおかしくない。でも、嘘のようには聞こえない・・・やはり、”完全堕天”していないからでしょうか?」
考えれば考えるほどわからなくなってきそうな、彼女の謎、敵の謎。
彼女のことはジャーファルさんが守るだろうけど、何だか・・・・・・・・・何だか胸騒ぎがする。
この時の私たちは、彼女たちの存在を注視することしかしていなかった。所在も不明だったから。
だからこそ、あんな悲劇を引き起こしてしまったのかもしれない。
私と王は月を見上げ、彼女の無事を祈った。