第9章 甘い約束
少ししばらくして涙も止まってきた頃には、もう夜になっていた。
私は急いで夕食を作って皆さんと食べ、日記をつけて湯浴みを終えた。
いつもなら自室へ向かうことが多いのだが、今日は違う場所へ向かっていた。
ジャーファルさんの部屋だ。
夕食の時、彼から「今日の夜、必ず私の部屋に来てください」と耳元で囁かれて、とても驚いた。
だって、それって・・・・・・・・・・・・
やだ、私ってば・・・!何考えているの!?
私は火照った頭をふるふると振り、熱気を逃がして深呼吸した。
そして扉を数回叩き、「私です。入りますね」と落ち着いて言い、部屋の中に入った。
「すみません・・・ちょっと仕事が溜まってしまってね。来たばかりのところ悪いけど、少し手伝ってもらえませんか?」
彼は入ってきた私にそう告げ、資料の山を幾つか床に下ろした。
・・・結構な量のお仕事が溜まってしまっている。私のせい・・・よね・・・・・・・・・
「まったく、シンときたらここ最近ずーっと監視の目を欺いてはシャルルカンと飲みに行ってるんですよ・・・椅子に縛り付けてやろうかと思って部屋に行けば、勿論今日もいない訳で。
おかげで王の分の仕事まで私がやらないといけない始末に・・・まったく、あの人ときたら・・・・・・!!」
ジャーファルさんは資料の山を一つずつ床に下ろしながら、私に向かって愚痴をこぼした。その姿はなんだか母親のようで、思わず笑みが溢れてしまう。
彼は一通り資料を揃えると、私に指示を出した。
「えっと、じゃあこれを分類分けして下さい。王に対しての損害賠償の請求用紙はこちら、南海生物による一部地域の被害状況についての用紙はあっち、中央銀王等国の中枢機関の報告用紙はこちら・・・・・・」
彼は少し早口に指示を出すので、私は覚えられずこんがらがってしまった。
・・・しかも私、こういうの苦手なのよね・・・どうしよう。
私は彼の言ったことを思い出しながら、資料を整理し始めた。