第9章 甘い約束
「えっ・・・」
「良かった・・・・・・・・・無事で。本当に良かった」
いつかかけてくれたみたいな、優しい声。
その声は私の心に入り込み、黒くなって沈んだ部分を溶かした。
「ごめんなさい・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・!」
私は彼に身を預け、泣きながらひたすたに謝った。
彼は大丈夫、大丈夫と言いながら私の身体を優しくさすってくれた。
どうして私はあんな馬鹿な事をしてしまったんだろう。
私はこんなにも愛されていたのに。気付いた気分になっていて、本当は気付いてなかったんだ。
「・・・ミルカ、貴女は確かに剣も魔法も使えません」
彼が唐突に話しだした。私を優しく撫でながら。
「でも、貴女には料理の才能があります。貴女の料理は、この王宮の色々な人を幸せにさせてくれているんです。
それだけじゃない。私は貴女の太陽のような笑顔に、幾度も元気づけられていた」
彼の言葉はいつも、私の心に深く染み渡っていく。
でも今日のこの言葉は、いつも以上に優しい言葉で、一生忘れられない言葉だった。
「人それぞれ、色々な取り柄があるんです。貴女は貴女の出来ることをして、私や周りの人達を幸せにしてください」
私は彼の言葉にはいと返事して、目に溜めていた涙を指で拭った。