第6章 悪夢の中の貴方
声が聞こえた。
私から見て右の方向を見ると、そこには一人の女性が立っていた。
でも、顔がハッキリと見えなかった。それは顔を覆う布のせいだと、追いかけていた光のおかげでわかった。
その光は、彼女の杖についている宝玉から発せられた光だったのだ。
「その子をしっかりと見てなさい。すべて、知ることが出来るわ」
彼女は少年に杖を向けて、そう言った。
顔を向けると、少年はそこに居なかった。何故なら、それは人として存在していなかったから・・・ただの映像だったからだ。
(ねえ、どういうこと?それに・・・貴女は誰?)
「あら、都合がいいわね。もう忘れた?・・・・・・まあ、今はそんなことよりこっちよ。さあ、見なさい・・・」
彼女は私の問いかけにちゃんと答えることはせず、杖を右から左に振った。
すると、映像の中の少年が動き出した。見覚えのある、武器を取り出し走っていた。
そして、映像に映った大人を殺した。その鏢で。
そう、それは・・・・・・ジャーファルさんの眷属器と、同じ鏢だったのだ。
まさか、そんな。
もしかして、こうしてどんどん人を殺めている暗殺者であろう少年が・・・・・・・・・・・・・・・
「そう、あんたの恋人、ジャーファルよ」
何も信じられなくなった。