第6章 悪夢の中の貴方
彼の部屋に入ると、そこには王様とヤムライハ様がいた。
私がすぐに手を組み頭を下げると、王様が頭を上げるように命じられたので、私は彼の隣へそっと歩み寄った。
「シンドバッド王様・・・ジャーファルさんの具合は、如何でしょうか?」
「大丈夫さ。彼もこの程度の傷には慣れているからね、そんなに重症ではないさ。心配しなくていい」
王様はにこやかに笑いながらそう言い、私をベッドのすぐ横の椅子へと誘導してくださった。
そこに座ると、安心したような顔で眠るジャーファルさんの顔がハッキリ見えた。とても色白で、綺麗な顔立ちの彼が。
「ジャーファルの傍に居てやりなさい。ヤムライハ、話したいことがあるから、俺の部屋に来てくれ」
「はい、王よ」
二人はやりとりを交わしてすぐ、部屋から出ていった。
私は椅子から立ち上がってベッドに座り直した。そして、近距離で彼を見た。
「ジャーファルさん・・・ごめんなさい、いつも助けてもらってばかりで」
彼は私が転びそうになった時に受け止めてくれたり、信じられないほどの速さで足りない食材を買ってきてくれたこともあって、本当に助けられてばかりだ。
「普段は恥ずかしくて、私、自分の思いをあまり貴方に言っていませんでしたね・・・・・・聞きたかったでしょう?」
彼はいつも私を部屋に呼び出し、耳元で優しく甘い言葉を囁きかけてくれる。私はいつも聞いてばかりだ。
「大好きです、ジャーファルさん・・・貴方がこんな怪我をしてまで私を庇ってくれたように、私も貴方のために何かしたい。魔法なんて使えないけれど、貴方を守りたいんです」
そう、私は魔法が使えないのだ。母はアルテミュラ出身、父はマグノシュタット出身で、確か父は水の魔道士であったはずなのだが、私は何の魔法も使えない。
だから、彼のために戦うことが出来ないのだ。
「私、一人でいるのが怖くなってしまいました・・・・・・
だからお願い、早く起きて・・・」
私が泣きながら彼の胸元に頭を埋めたので、最後の方は蚊の鳴くような声になってしまった。
貴方がいないと怖い。貴方がいない世界なんて考えられない。ちゃんと目覚めるとわかっていても不安でたまらない。
早く、起きて。