第5章 ネックレスは悲劇を呼ぶ
今朝は晴れていたはずなのに、お昼になると雨が降り始めていた。
静かな廊下に雨の音が響き、周りも暗くなってくる。
こんな日は、私が小さかった時のことが思い出される・・・
「いやぁ!やだあ!!おかあさん、おとうさあん!」
「落ち着きなさい、ミルカ」
「だってぇ・・・もう、かえってこないんでしょ・・・?おとうさん、おかあさん・・・・・・・・・」
「大丈夫じゃよ、ミルカの両親は死んだんじゃない。”ルフ”となり、君の傍にいつもいるんじゃ。それに、おじいちゃんもおるよ。だから君は独りじゃない。辛い時はいつでも、おじいちゃんが話を聞くよ」
「・・・うん、おじいちゃん・・・・・・!」
懐かしい、私の祖父との生活の記憶。
両親を病気で失って、悲しみに暮れていた私の頭をしきりに撫でてくれていた暖かい祖父。
今はもう”ルフ”に還ってしまったのであろう彼との思い出は、私にとってはかけがえのないものとなっていた。
「おや、ミルカ。どうしたんです?」
祖父との思い出を思い出しながら歩いていると、いつの間にかジャーファルさんが目の前に立っていた。
「あ、ジャーファルさん・・・ちょっと、祖父の事を思い出していたんです」
「へえ、そうでしたか。丁度いい、昨日仕事を一気にやり過ぎてしまってね。シンが自分は仕事をしないくせに私に今日は仕事をするなと言ってきたものだから、どうしようかと考えていたんだ。だから、私は君と話がしたいな」
彼はにこりと笑って、返事を待たずに私の手をとり歩き出した。
それだけで私の心臓はドキドキと高鳴り、さっきまでの憂鬱はすっかり吹き飛んでいた。