第1章 茶会での出会い
「あの娘は絶賛と言うまでの美女ではないが、男達は魅了される。だがあの娘は求婚を全て断る‥‥そういえばお前たち小野小町を知っているか?」
小野小町。
その女は平安時代に名を馳せた絶賛の美女と呼ばれた女流歌人。
色んな男に求婚などをされたが断ったがそれでもという男達にある事をさせていた。
「小野小町。確かに平安で有名な歌人でありあの百夜通いも有名」
ポツリと光秀が言葉をこぼす。
百夜通いは小野小町が深草小将の求婚がしつこい為、『百夜私の元に通えば求婚に答える』と言った。
勿論深草小将は夜になると小野小町の元へと向かったが百夜となる夜、命を落としてしまったのだ。
これは小野小町といえば有名な話。
だが秀吉達は小野小町と朱里が何か関係あるのかと不思議に思う。
「朱里はしつこい男達に百夜通いをさせている。まぁ、誰一人百夜は通えず断念するが、過労で死ぬか護衛の者に殺されている。嫌な噂があるためあの娘は孤立しているんだ」
「成る程‥‥」
大人しそうな顔をしているのになかな過酷な事をさせている。
それがあの姫の本性なのかと秀吉は息を呑んだ。
だが姫達の中ではそんな女もいるので珍しい事でもない。
「お前も魅了されてそうならないように」
「魅了される事はありません。必ずご命令された事は果たします」
「ああ」
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そして茶会が終わり、秀吉は朱里の姿を探した。
他の姫達は駕籠(かご)に乗っているのを見たが一人だけ彼女の姿だけが見当たらない。
茶会の場所であった場所を探したりとしていると、池の魚を見ている朱里をやっと見つけた。
女中はいない。
一人だけそこに残っており無の表情でじっと見ている。
秀吉は彼女の隣にへと足を運び同じように魚を見る。
「珍しい魚でもいましたか?」
「っ!?」
気づいてなかったようで朱里は肩を跳ねさせて目を見開いて秀吉から距離を取った。
足音にも気づかいな程熱中して魚を見ていたのかと考えながら秀吉は軽く頭を下げた。
「申し訳ない。驚かせるつもりはなかったのだが」
そして油断させるように柔い笑みを浮かべた。
これは光秀から教わった相手を油断させる方法の一つ。
女ならいちころだろうと言われた。