第2章 逢瀬
それは家康であり、ブスッとした不貞腐れた表情を浮かべていた。
理由は無理矢理連れてこられた為である。
「何で俺まで…」
「秀吉がちゃんと仕事をしているか、皆で監視する為だ。これも俺達の仕事だぞ家康」
「何が仕事ですか。ただ秀吉さんの仕事を面白がってるだけでしょ」
溜息をつく家康を無視して政宗と光秀は観察を続けていた。
監視をする為と言っているが、半分興味本意と朱里がどんな姫か気になった為。
最初は家康以外の三人だけだったが、偶然通りかがった家康は巻き込まれたのだ。
そして今に至るが、家康は既に帰りたい。
「監視しなくても、秀吉さんならちゃんと仕事はするでしょ。俺帰っていいですか?」
「そう言わずにいろ。面白いのが見えるかもしれんぞ」
そう光秀は言うと家康が帰らぬように腕を掴む。
そして移動していく秀吉と朱里の後をつけていった。
一方やはり視線を感じる秀吉は辺りをキョロキョロとする。
(何だぁ?やっぱり誰かに監視されているような視線を感じるが…)
秀吉は眉間に皺を寄せながら辺りを見る。
だがその監視している何者かは見つからず、小さく息を漏らしながら歩く。
『あのやっぱり何かあるのですか?』
また朱里が袖を引っ張りそう聞いてくる。
そして秀吉は苦笑いを浮かべてから『大丈夫ですよ』と言い、今の自分の仕事を忘れていた事を叱責した。
今の仕事は朱里の警戒を取って、城の情報や乃木の事について聞くこと。
なのに気が逸れたりするなど未熟だと思った。
「もうすぐで着きますよ。そこの茶屋は餡蜜が本当に美味いんです」
『楽しみです』
先程の笑みとは少し違う笑み。
作られた笑みという事に秀吉は気付き、この姫はよく分からないと感じた。
「作り笑いだな」
「そうですね…楽しくないのでしょうか」
「楽しいとかそういう事じゃないでしょ。何か思う所があるんじゃないの」
建物の影に隠れながら観察する四人。
通り過ぎて行く町の人間は、不思議そうな顔をしながらその武将達を見ていた。
だが話しかけず目を見開いていたりするだけ。
傍から見るとただの不審人物ではあるが、安土の武将なので首を傾げるばかりであった。