第2章 逢瀬
秀吉は馬の手網を持ちながら、隣にいる朱里を見てみると街の様子にワクワクしている様子。
その表情はまるで幼子の様であり、秀吉はそういう表情もするのかと思った。
「安土の城下は賑やかですし、きっと楽しいと思いますよ」
『本当に賑やかですね。他の傘下の大名の方の城下には行ったことがありますがここまでではありませんでした』
筆談にてそう会話をしていくが、街の人間は秀吉が見慣れない女と歩いている為此方に視線をやってきた。
街の娘達は泣きそうな表情で、男達は頬を染めながらニヤニヤとしている。
別に朱里とはそういう関係ではない。
秀吉は溜息をつきながら歩いていき、馬を置く為に知り合いの元に行く事にした。
「馬を置く為に、知り合いの元に行きますが良いですか?」
『はい。全然大丈夫ですよ』
「では参りましょう」
秀吉は馬小屋を兼ね備えている、知り合いという名の部下の家へと向かった。
足軽の部下ではあるが一応信用している。
「すまないな、後で取りに来る」
「いえいえ。秀吉様、どうぞお楽しみくださいな」
「言っておくが、別にそういう関係ではないからな」
朱里に聞かれないように、そう言うと秀吉は金が入った袋を足軽に手渡した。
そして少し離れた所にいる朱里の元に向かう。
「お待たせしました。では参りましょうか」
そう言い向かおうとした時、とある気配を感じて秀吉は辺りを見渡す。
誰かに見られているような気配だ。
『どうかしましたか』
その行動を不思議に思った朱里は、秀吉の袖を掴み書本の文字を見せてくる。
何処か心配そうな表情の彼女に秀吉は笑って見せた。
だが気配が気になる。
何処かの敵の使いがいるのか、はたまた朱里の事を心配した城のものがいるのか。
「……すみませんでした。行きましょうか」
そんな秀吉を茂込みから見ている男が四人いた。
光秀に政宗、そして家康と三成の四人がしゃがみこんで様子を伺っている。
「あっぶねぇ…。もう少しでバレる所だったぜ」
「秀吉様は気配に鋭いですからねぇ。そしてあちらの方が佐野様のご息女の朱里姫様ですか」
茂みから三成は二人を見て、いつも通りの柔い笑みを浮かべていた。
だが一人だけ面白くなさそうな表情を浮かべていた。