• テキストサイズ

【イケメン戦国】忘却草ノ恋心【豊臣秀吉】

第1章 茶会での出会い


〜三人称〜

ウリを畳の上に立たせた秀吉は、朱里の表情を確かめようと目線を上にあげる。
彼女は目を少し輝かせてキョロキョロとしているウリを、眺めていて初めて見る表情をさせていた。
こんな表情も出来るのか、そう思いながら秀吉は口元に笑みを浮かべる。

警戒心というのは意外と簡単に解ける。
秀吉の場合何処か警戒していた朱里であったが、ウリを見ればそれもいとも容易す消えた。
可愛らしい動物など自分に危害を加えることはないからだ。


「どうぞ、抱っこしてやってください」


秀吉はウリを抱き上げると朱里に手渡す。
そして手渡された彼女はちょっと、戸惑ったがそっと撫でてやる。
柔らかい毛並みにクリッとした瞳のウリは、意外と秀吉より女性を誑かすのが上手いのかもしれない。


「俺が飼っている猿でして。まだ小猿なんです」

「猿を飼うとは珍しいですね」


綾はウリを珍しげに見ていた。
武将が飼うとしても鷹に馬などであり、猿は珍しいのだ。
秀吉はまだ小猿の方が普通ではあるな……と内心思いながらとある二人を思い浮かべる。

光秀は白狐で政宗は小虎。
そして家康は小鹿であり普通というならば、信長の鷹と三成の猫ぐらいだろう。
意外と安土の武将は珍しいのが好きなようだ。


「いや猿の方がまだ良いかもしれない。他に白狐や小虎に小鹿を飼っている奴もいるので」

『白狐に小虎に小鹿ですか』


朱里はかなり驚いた表情だった。
そしてふと何かを思い出したのか、綾の袖を引っ張る。
彼女のその行動だけで何か分かるのか、綾は頷いてから部屋を出ていく。

秀吉はどうしたのだろうか……と思っていると綾は早くに戻ってきた。
そして腕の中に小さなまだ産まれたてぐらいの子犬がいる。
まだ目が開いていない小さな命を朱里は抱く。


「この子は姫様が飼っている犬の、呉千代が産んだ子犬でございます」

「朱里殿も犬を飼っているのですね」

『はい、父上に我儘を言って飼っているんです。呉千代は今隣部屋にいるのですが子を産んだばかりで、警戒心が強くて知らない人がいると襲おうとするので』


そう本に書いた朱里は子犬を、秀吉の膝に乗せてから柔く頬んでいた。
また初めてみる表情に秀吉は内心驚きながら、膝でモゾモゾ動く子犬を優しく撫でてやる。
/ 31ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp