第1章 茶会での出会い
『難しいお話でしたか?』
「えっ、あぁ……少し。声を失ってまで王子?という男に会いに行ったが結局は王子は愛している姫君に似ているから人魚姫を可愛がる。そして最終的には泡となって死ぬ……報われないお話ですね」
結局人魚姫は報われずに死んでしまう。
恋も実らず王子を殺さず彼の幸せを願って自分から死を選ぶ。
何とも言えない物語だ。
日本の童話は最終的に幸せとなる。
だけど海外のこの人魚姫は幸せとはならいのだ。
それが少し何処が面白いのか分からなかった。
『私は、人魚姫が凄いと思いました。愛する人の為に死を選ぶ……。しかも王子が好きで人間となって声を失う。愛の力は凄いなって関心しましたよ』
「成程……。愛の力ですか」
ふと俺は思うところがあった。
この人魚姫と一緒で彼女は今声を失っている。
失っているというか声を出せずにいるのだが、それは何故なのか気になる。
聞いても答えてくれるか……。
そう考えながら彼女の顔を覗き込むと目が合う。
藤色の美しい目がこちらを見ており、近い距離に驚いているのか目が見開いている。
よくよく見ると、絶世の美女ではないが他の姫たちよりは気品がある。
作り笑顔もせずに表情はちょっと乏しいが笑ったり驚いたり、警戒したり。
少し惹かれる所があった。
「ごほんっ!!」
「っ……!綾か」
「馴れ馴れしく名前で呼ばないで頂けますか?姫様、お茶をお持ちしましたよ」
『ありがとう、綾』
綾は朱里殿だけに微笑みながら、お茶とお茶菓子を置いた。
そして部屋の隅に座り此方を見ている。
俺を監視するつもりだろう。
本音を言うと凄く邪魔な存在だ。
きっと俺が何か質問したら割って入ってくるのだろう。
それが分かっているので厄介な存在で邪魔。
「少し質問しても宜しいでしょうか、朱里殿」
『どうぞ。お答え出来ることでしたら何でも』
「では……何故声が出ないのですか?」
そう聞いた瞬間朱里殿は表情も変えずに俺を見てくる。
すると綾が立ち上がり俺を睨みつける。
「人には言えない事がありますし、それはお答えしません」
「悪いが、俺は朱里殿にお聞きしているんだ。お前には聞いていない」
「っ!やはり農民の出身だけあって無礼な男!!姫様、追い出しましょう!!」