第1章 茶会での出会い
違和感を感じながら歩いていると、チラチラと下級武士だろう侍達が此方を見ている。
その瞳には驚きと警戒心が混じっていた。
秀吉はそれを見ながらやはりおかしいと感じた。
少なすぎる人間に姫一人置いての狩り。
朱里の事をそこまで溺愛していないのか?と思っていると綾の足が止まる。
「此方が姫様のお部屋になります。お茶などをお持ちしますのでゆったりと。くれぐれも……姫様に御無礼などなされずに」
「するわけないだろう。安心してくれ」
そうは言ったが綾は警戒している。
眉間に皺を寄せて歩いていき、秀吉は目の前の部屋を見た。
「朱里姫、秀吉です。入っても宜しいでしょうか?」
と声をかけたもの、『いいですよ』とは声はかかってこない。
彼女は声が出せないんだと思い出した秀吉は慌てた。
すると障子が開き、中から朱里が現れて少し怪訝そうな表示をしながらも苦笑いを浮かべる。
呆れとも見えるその笑みに秀吉は顔を俯かせた。
「申し訳ない。気分を害してしまったら本当に申し訳ない」
『いいえ、大丈夫ですよ』
朱里はこないだと違って西洋の物である『ペン』を取り出してスラスラと書く。
やはり達筆で綺麗な字だ。
「西洋のペンですか……」
『はい。父上に貰いました』
やはり娘を愛しているのかと考えるた。
西洋のペンはかなりの値段がして珍しい。
どんな高級な花瓶や壺よりも高く、信長も少し悩んでから買っていた。
万年筆を握る朱里はまた文字を書き出す。
彼女が声を出さなくなったのは2年前らしく、筆談で会話をしていたので慣れている。
なのでスラスラと書くのが早い。
そして朱里は本に書き終えるとそれを秀吉に見せる。
本には『どうぞお入りください』と書かれており、彼女は少し下がる。
「お邪魔します」
中に入ると沢山の本があった。
日本の書物からこれまた珍しく西洋の本までがある。
西洋の本ならば英語が並んでいるだろうに読めるのだろうかと秀吉は目を見開く。
「朱里殿は……英語が読めるのですか?」
『はい。この城に前に滞在していたキリスト教の外国人の教徒に教えて貰いました』
「そうなのですか……凄いですね。俺はまったく英語は読めないので」