第6章 見合い?
「別に・・・・・・気にしてませんよ」
「そうか。ならいい」
「・・・・・・」
握られた手が熱い。
言葉は素っ気ないのに、そのくせ重なる手は解きほぐすみたいに指を絡めてくる。
ずるいんだ。
ズルい。
この人は、本当に。
冷静に、いつも通りに、ここ数日はずっとそんな緊張感を背負って先生と話してきた。
そのつもりだった。
なのに実際は始めから見抜かれていた。
この人は全部分かっている。
分かっているのに私をこうして追い詰める。
簡単には逃がしてくれないこの人を前に、私がどれだけ抗ったところで結局最後は気付かれる。
恥ずかしさと、くやしさと、その他良く分からないモノがない交ぜになって一気に襲い掛かってくる。
それにあっさり負けた私は、立てた膝に顔を埋めた。
「・・・・・・ウソです。少しだけ気になってます」
「ほう・・・?」
この上なく不本意だけど、顔を伏せてボソッと呟く。
数分前とは完全に立場が逆転した。
子供っぽく拗ねる、ちょっとだけ心なしかほんッの僅かに可愛かったこの人は、残念な事にいつも悪い大人へと既に立ち戻っている。