第6章 見合い?
「拗ねないで下さいよメンドくさいな」
「面倒とはなんだコラ。キスだけでいいからさせろ。お前が足りてねえ」
「私で満たそうとしないで下さい」
ご機嫌斜めな大人を袖にして言うと、横からじっとこっちを見上げてきたのが分かるから絶対に顔は向けない。
再び小さく溜息をつけば先生も顔を前に戻したのを視界の隅に捉え、それと同時に右手が温かく包まれたのを感じた。
上から重ねて些か強めにキュッと握られる。
拗ねた大人の子供っぽい仕草には少しだけ気が緩む。
とは言えここで付け込まれる訳にはいかない。
「・・・・・・メイリー。今晩ウチ来い」
「行きません。バイトです」
頑固拒否。
隣から漂う重々しいオーラ。
「・・・・・・終わったら迎えに、」
「来ないで下さい。来てもらってもあなたの車に乗る気ありませんから。家帰って課題やって寝る予定です」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
明らかに何か言いたげだ。
グサグサと突き刺さってくる視線を受け流す。
何かから身を守るように、片腕を体の前に回して膝を抱えた。
晒した顔に当たる風はいくらか冷たい。
少し前まで暑かったくせに季節なんて勝手なものだ。
校庭に立ち並ぶ樹木はいつの間にかその葉を茶色に変え、一枚また一枚と枝から離れては地面へとハラハラ落ちていく。