第1章 屋上で
「つーかなんですか、いきなり。部活の勧誘?」
「だって考えてもみろよ、女子陸上部だぞ?最悪だろ。暑苦しいにも程がある」
「・・・何言ってんですか、センセ・・・・・・」
現実はこんなものだ。
教師が言う言葉ではないだろう。
度々聞かされるこの人の発言には呆れるばかりだ。
「暑苦しいのと私が入部すんの関係ないですしね。最悪だと思ってるトコに誘わないでくださいよ」
「お前がいたらまだ耐えられる気がする。屋上立ち入りの共犯者が同じ苦痛味わってると思えば少しは気も紛れるだろ」
「・・・・・・私、先生嫌いだ。巻き込む気なら煙草吸いに来てんのバラしますよ」
遠い目になって呟いた。
先生は鼻で笑い、またもや頭をぐしゃぐしゃにされる。
「おもしれえな、お前は。相当性格が悪い」
「・・・先生に言われたくありません」
「せめてお前のクラスの数学担当だったら色々遊べたんだが」
「何する気ですか。人をおもちゃにしないでください」
先生の口から出る話しの一つ一つは、大人が、それも教育者という立場にある人が言う内容としてはこの上なく常識を弁えていない。
だけどそれは建前ばかり並べ立てる大人に比べれば嘘がなくてさっぱりとしたものにも感じられる。
先生と話す時間は嫌いじゃない。
教師だけど教師っぽくなくて、綺麗な顔の造りをしている割に人相にはいかにもソチラの稼業の方で。
親しい友達でもないのに本音にごくごく近い心境を軽口ついでに言えてしまうくらいには、多分私はこの人に懐いているのだろう。
最近に至っては予鈴を耳にして若干肩を落とすまでになった。