第1章 屋上で
スポーツ特待でこの学校に入ってくる生徒の多くは、バスケ部かバレー部、もしくは陸上部所属だ。
そうなれば自ずとその部活は強くなる。
暇潰し程度の軽い心意気でそこの中に入ろうと思える程、私には陸上に対する思い入れも熱意もない。
先生は表情を変えないものの面白そうに目を細めて聞いていた。
先生の授業は受けたことがないし屋上以外で会うこともないからよくは知らないけど、耳に入ってくるこの人の評判は、ここでの会話を思い起こす限り別の人間を指しているとしか思えない。
ここの生徒の間でリヴァイ先生の話題が上がれば、必ず一度は誰かが厳しいと口にする。
校則厳守は勿論のこと、風紀の乱れる事を決して良しとはしない校内一厳格な先生。
数学の教え方はとても分かり易いと評判だが、もしもリヴァイ先生の授業で居眠りなんてしている生徒がいたらそいつは間違いなく地獄を見る事になるらしい。
私は受けた事が無いから知らないが、うっかり居眠りをしてしまい机を蹴り飛ばされ強制的に起こされた事がある馬鹿のダチの話によると、
目の前にそびえ立つ鬼の形相をしたリヴァイ先生を見るくらいなら死んだ方がマシだそうだ。
しかしそんな恐怖伝説と並走して、リヴァイ先生は女子生徒からやたらモテる。
なんて話もしばしば耳にする。
実際は生徒からと言うより、女女性教師を含めてとにかく女の人から大層モテる。
ストイックだとかミステリアスだとか、まあ確かに分からないでもないけれどだいぶ美化して捉えられているように私は思う。
本人は本人で誰に言い寄られてもその気のないような態度しか取らないらしいけれど、この人にまつわる話題は校内の各所で飛び交っている。
と言うのも、目立つのだろう。
存在感なのかなんなのか、漂うオーラがどうにも。
そんな人に部活を誘われても、私が心動かされる事は無いが。