第4章 大人の階段
「メイリー・・・・・・」
いくらか、熱のある声。
先生が私を呼び、私は先生を視界に捉えた。
下の名前を呼ばれたのは初めてだし、何よりこの名前をちゃんと覚えていたことに驚いた。
レティシアかお前のどちらかでしか呼ばれてこなかったから、先生からそう呼ばれるのは新鮮だ。
「・・・なんかアレっぽいです。援交?」
「色気ねえ・・・。一銭も出さねえぞ。本気で犯罪になる」
「もう遅いです」
状況と体勢の割にムードの欠片もない事を言い合って、私たちはくすくすと笑い出した。
緊張感は意外にも少なく、間もなくして入ったのは先生の寝室。
だけど小ざっぱりとした部屋に通され後ろから抱きすくめられたところでようやく、さすがにほんの少しだけ肩が強張ってくる。
しっかりと、何かが項に触れる。
先生の唇だと気付いたのはすぐ後。
「・・・・・・怖いか?」
「いえ。でも・・・・・・」
「なんだ」
「とうとう淫行ですね」
「ああ。淫行だな」