第4章 大人の階段
「先生・・・」
「ん?」
「・・・・・・言いました、さっき。いいよって」
どういう意味かは考えるまでもなく。
私が少し俯いて言うと、先生は興味深そうに目を細めて言った。
「血迷ったか?」
「多分」
些か投げやりに答える私の目をじっと見定め、先生は今度こそ本気で私を抱きしめてきた。
男の腕の中に埋まりきつく抱きしめられるのは、なんと言うのかとてつもない違和感。
だけどそこに嫌悪の類は存在しない。
とても弱い力の加減に困惑こそするものの、それは決して嫌なものではなかった。
「何してんだ私、って思ってるだろ?」
抱きしめられたまま投じられた問いかけ。
全く、どこまで本気なのだか。
私は顔を上げることもせず、行き場のない手をソファーの上に投げ出して素っ気なく返した。
「そりゃまあ。私、普通の女として生きてきましたし。先生は?」
「だいぶ思ってる。さすがにな。生徒抱いた試しなんかないから想像つかねえ」
「は?」
「だが安心しろ。知識ならある」
「いや、そこじゃないでしょ。ていうか私、普通の女ですから女みたいに抱けばいいじゃないですか。何が知識ですか」