第4章 大人の階段
「お前さっき、いいよっつったな?」
「言いました?」
「すっとぼけんなクソガキ」
髪をわしゃわしゃと掻き乱され、鬱陶しく振り払おうとすると反対に腕を捕られた。
すっと体ごと先生の方に引かれ、両肩を掴んで向き合わされる。
「なんでお前はここに来た?上りたいんだろ、大人の階段。手伝ってやるよ」
異常者だ。
冗談とも本気とも取れない脅しを爽やかに告げてくる。
いくらかげっそりとした心地で真正面からそれを受け取った私は、鼻で笑って先生を押し返した。
「先生、ほんとに捕まりますよ?」
「お前みたいな生意気なガキは一度ガッツリ泣かしといてやんねえとな」
「・・・・・・冗談抜きでヘンタイっぽい」
軽口で言い合い、さらに距離が近づく。
しかしそれを分かっている私も、今度は抵抗を見せずに大人しくしていた。
私がここに来た理由。
犯すと言ってくるような男に、こうもノコノコと付いてきてしまったワケ。
異常者なのは私も同じかもしれない。
綺麗な花火なんて見ていたくなかった。