第1章 屋上で
私と先生はそれからちょくちょくここで顔を合わせるようになった。
先生は職員室からこっそり鍵を拝借し、私は針金で不法侵入を繰り返して。
だが授業で直接関わり合うことが無いせいか、屋上で会うリヴァイ先生はいつも先生らしくない。
「お前、部活はどこか入ったのか?」
「入ってませんけど?」
「そうか。通りで他の女と比べてヒョロっこい体してやがると思った」
「いま鍛えてる途中なんです。つーかそこまでヒョロくない・・・」
自分から聞いてきたくせに失礼な返事をされて、不貞腐れて言い返すと先生は私の頭をぐしゃぐしゃと雑に撫で付けた。
嫌な顔を向けて手で振り払うと満足そうに鼻で笑われる。
「今からでも遅くないから陸上部に入れ。俺も陸上部の副顧問させられてる」
「へー」
「へー、じゃねえ。明日入部届持ってこい」
「ヤですよ、めんどくさい。そろそろバイト始めますし」
フェンスに背を預けてやる気なく言うとべしっとデコを叩かれた。
痛ッ、と声を上げて額を押さえ、恨みがましく視線を向ければ無表情の先生が入る。
「高校生っつったら部活だろ。ウチ強いぞ?全国いける」
「知ってます。だからそれが余計に嫌なんです。いい部員勢揃いしてんですから今更勧誘する意味ないじゃないですか。一カ月も経ってんのに」