第4章 大人の階段
でもあの時先生から連絡が入った途端、私の気持ちはジンから完全に離れていった。
目の前にある綺麗な花火よりも、隣にいる格好いい彼氏よりも、一刻も早くこの非常識な大人の声が聞きたいと思った。
あっさり白状する私の言葉を聞くと、面白い物でも見つけたような顔をして頭を撫でてきた先生。
ポンポンと、子供をあやす様に手を置かれる。
「引っぱたかれてすっきりとするとはな。フラレたんじゃなくてお前がフったのか」
「んー、どうでしょう。微妙ですね。遠回しに切り捨てて直球で憎まれた感じ」
「なんか分かんねえけど多分お前が悪いと思う」
「私もそう思います」
淡々とした私の切り返しがどうやら先生は気に入ったようだ。
くすくすと可笑しげに笑い、私の頭から手を離した。
ソファーの前にあるガラステーブルの上には煙草の箱があり、先生はそこから一本を取り出すと迷わず火を点け出す。
嗅ぎ慣れたにおい。
不思議と嫌ではない煙たさ。
先生が一服するのを横から目で追い、ソファーに深く沈み込んだ。
「先生、私・・・・・・。なんでここに居るんですか?」
暫くして、気まぐれに発してみた頭の悪い質問。
先生は煙草を手に持ち替えながら私を見た。