第4章 大人の階段
先生はすぐに河川敷まで来て、私を車に乗せるとどこかへと連れて行った。
着いたのは先生の自宅。
何をしているのだろうと思う反面、先生の近くにいることで落ち着いている私がいた。
「フられたか?引っぱたかれたんだろ」
ソファーに座る私の前に、先生は麦茶を出して訊いてきた。
隣に腰かけて無表情に顔を覗き込まれる。
確かに引っぱたかれはしたけど・・・。
私は先生に目を移して首を傾げた。
「もしかして赤くなってたりします?もうそんな痛くないんですけど」
「女に殴られると大抵の男はそういう顔付きになるんだよ」
「私の場合は男ですけどね」
薄く笑われた。
ちょっと情けない気分だ。
多分あんまりよろしくない経験が豊富なのだろう先生は、女の人に殴られた後の男性感情にも詳しいらしい。
そしてきっと、これも本人の実体験だ。
「・・・殴られるような事言った私が悪いんです。でもなんかすっきりしました」
引ったかれた瞬間、驚きよりも肩の荷が下りたという感想の方が強かった。
ジンのことは嫌いではないし、可哀想なことをしてしまったという思いもあるけれど。