第4章 大人の階段
「・・・・・・ハイ・・・」
『シカトしたな?』
初めての電話の、第一声。
電話越しに笑うと先生も笑った。
『花火見てんだろ?終わったらカレシ帰せ。俺の相手しろ』
人が彼氏と一緒にいると思っているにしては随分な物言いだ。
学校の生徒に対して自分の相手をしろと強要してくる教師も珍しい。
理性的な部分でははっきりとそう思う。
なのに、なんでだろうか。
なぜかは分からないが私は今、この瞬間がひどく心地よくて仕方がなかった。
無機質な機械を通して届けられる先生の声が耳から入り込んでくる。
『生徒に無視されて俺は泣きそうだ。ウチへ連れ込む。それで犯す』
いい大人が何を言っているのだか。
堤防から川裏へと下り、道に沿ってふらふらと歩きながら私は電話越しに呟いた。
「いいよ、先生」
『・・・・・・あ?』
「もう終わりました。花火」
私の後ろでは盛大に花火が上がった。