第4章 大人の階段
潔く身を引く親切心とでも言うように、自覚できる程の突き放した言い方。
それを聞いたジンは目を見開き、腕の力を少し弱めた。
私が腕を引いても、ジンは信じられないといった顔をして私を見ていた。
だけどそれもほんの束の間だ。
次の瞬間には一気に憎しみの表情へと変わっている。
「・・・っあんたなんて嫌いだ!!」
バチンと、激しい音が頬を打った。
しかし私たちの後ろでは花火が鳴っていて、平手の響きはその音でかき消される。
怒りの表情のジンと、無表情で佇む私。
ジンは私を一睨みして、怒りも収まらぬままその場から駆けて行った。
ここですかさず私が追いかけていくと思っているだろうか。
たぶん、そうだろう。
でも私が足を向けたのはジンが消えていった方向ではなかった。
スマホを再び手に持ち、着信履歴を表示させる。
一番上の欄に出ている名前を呼びだそうとして、指先を動かすよりも一瞬早くスマホが振動を始めた。
相手は、先生。
計ったようなタイミングには驚いたが迷わず電話に応じた。