第4章 大人の階段
こういうとき、人間はすごいと思う。
手を放そうとすると必死になって引っ張られた。
何も言わなくたって、感覚的な部分でこの後言われることをすでに察している。
ジンは私がそれを言い出す前に口火を切った。
「学校で同じクラスの人が、付き合ってって言ってくるんです。何度断ってもしつこくて・・・すごく困っています。なあ、どうすればいい?」
何かを期待するように私を見下ろす。
そんなことは嫌だと言って自分を止めようとする私を、きっと彼は望んでいる。
だがそんな彼に罪はない。
大事にしたいと思うのは彼氏が彼女に抱く当然の感情だ。
反対に彼のことを本当に好きだと思っている奴であれば彼から守ってもらえるだろう。
これだけ格好いいなら尚更、普通の女ならやすやすと手放したいとは思わない。
しかし何事にも原則に例外はつきものであって。
私は今、ただ単に。
とにかく面倒だった。
「なあ・・・」
「いいんじゃないか?」
「・・・・・・は・・・?」
「ジンの好きにしろよ。私のことは気にしなくていい」