第4章 大人の階段
「ごめん。私ちょっと行くとこできちゃった」
「・・・・・・え?」
スッと、ジンから消えた笑顔。
私はそれをきちんと身もせずに、繋いでいた手を離してジンに背を向けた。
さすがに驚いたジンは私の腕を取って一緒になって歩くが、人ごみをかき分けて歩く私が後ろを振り返ることはない。
「待って!なあ、どうしたんだよっ!!」
ある程度人の波を過ぎ、人気の見物地点を離れた場所に出た。
人の影もまばらになってきた辺りでジンは叫び、掴んだ私の腕をぐいっと引いた。
綺麗なものを見て、綺麗だと言って喜ぶ彼。
それは何も間違っていない。
おかしいのは私だ。
「ごめん。行かないと」
「行くって・・・どこにですか?どうしたんですか?俺なにかしましたか!?」
「ちがうよ。ごめんな、ちょっと急用できたんだ」
「そんなの・・・」
訳が分からないといったジンの顔。
私を引き止め、少しだけ辛そうな顔をしている。
それを鬱陶しいと思ってしまえる私は、最低な人間以外の何者でもない。
「ジン、」
「あのなっ。ほんとは今日、聞いてほしいことがあるんです!どうしていいか分からなくて、だからメイリーさんに聞いてほしいなって・・・」