第4章 大人の階段
これを楽しいと言ってもいいのか。
何が面白くて私は笑っているのだろう。
何故かは分からないけれど、こんなに近くで花火を見ているのはなんだか嫌だった。
しかしそれを頭から追い出して人ごみの中で夜空を見上げていると、ふとスカートのポケットが振動しているのに気づいた。
中に入れているのはスマホだけ。
ジンが花火に気を取られている間に、手を繋いでいるのとは反対側のポケットを探った。
暗い手元でスマホの一面だけが明るく浮き出る。
周りが上を向いている中、私だけが目線を下げて画面の表示を確認した。
視界がはっきりと捉える。
リヴァイ、と。
そこに出ている名前。
私は歓声から耳を遠ざけて、手に持ったそれをしばらく眺めた。
向こうが切るのを待って振動が止んでから、何事もなかったかのように前を向く。
「・・・・・・ジン」
少し声を張る。
隣に呼びかけても、花火に夢中のジンは気付かない。
「ジン」
隣を見て、もう少しだけ大きく声を出した。
するとジンも今度は気付いて、笑顔で私を見上げてくる。
綺麗だねとか、凄いねとか、おそらくそれらの言葉を期待しているのだろう彼に、私はどこか冷めた気分で言い放った。