第4章 大人の階段
「あ・・・」
その時まで適当に話を続けていると隣のジンが短く発し、直後に一発目の花火が夏の空に咲いた。
日も落ちてきた中で周りからはわあっと一斉に声が上がる。
最初の花火を継起に次々と打ち上げられていき、惚れ惚れしながら空を見上げる人々の歓声で湧いた。
ここにいる誰もが待ち望んでいた、色取り取りの花。
いくつも打ち上げられては、パチパチと夜空に散っていく。
「すげーっ、キレー!」
周りの観客と同様、私の隣でジンが騒いだ。
綺麗だと、花火を見れば誰もがそう言う。
当たり前のことだし、綺麗に見せるために作られているのが花火だ。
しかしぼんやりと空を見上げたまま、私はそれをどこか遠くに眺めた。
綺麗でしかない花火。
好きか嫌いかと問われれば、私はもしかしたら嫌いなのかもしれない。
「わー!!今のスゴいですね!!」
赤、青、白、緑。
連続で一際目立つ花火が上がると、観衆はこれまた大きく歓声の声を上げた。
ジンは私の腕を引っ張り、男の子らしいはしゃぎ方で楽しそうに叫んでいる。
夜空と交互に顔を覗き見てくる視線にも気付いているから、時折私も隣を見上げてはジンに笑い返した。