第4章 大人の階段
ジンと手を繋いで歩きながら、先生が言っていたことを思い出す。
人ごみに酔わない方法とは果たしてどういうものだったのだろうか。
このあと更に人が増えることが間違いない状況下にあり、私は切実にその答えが欲しくなった。
「この辺でいいですか?この先行っても同じような・・・。あんま進めなくなってきた」
適当な場所で足を止めて、ジンが言うと私も頷いた。
「もうそろそろか・・・。俺毎年花火大会来てますけど、今回は特別です」
微笑んで、きゅっと手を握られる。
私たちが一緒に花火大会に来たのはこれが初めてだ。
去年は確か、私の模試と重なって来られなかった。
そしてそういえばあの時、来年は一緒に行きましょうねと言ってジンから誘われていたことを私もここに来てようやく思い出す。
この子は私の何がいいのだろう?
私は彼氏想いとは言えないし、特筆して気に入られるような要素もない。
おまけに男っぽい・・・。
だけどジンは付き合い始めの頃からよくこうやって手を繋いできた。
言葉にして何か言ってくることはなくても、繋いだ手から伝わってくる感情は束縛の類に似ている。
私にとってそれは正直、心地良いものとは言い難い。