第4章 大人の階段
「メイリーさんは?高校って大変ですか?」
反対に聞き返され思考を巡らせた。
高校生活とは言っても、それまでと何かが劇的に変化する事はないと思う。
中学よりは環境が少しだけ緩やかで融通も効き、勉強量は確かに増えるけど些か窮屈な感覚が抑えられる。
そんな程度か。
ただ、私の場合真っ先に頭に浮かんだのは、毎日屋上で顔を合わせる無駄に眼力の強いあの人だった。
何だか妙に悔しい。
それにアレはきっと高校生活の中の原則外だから、ジンの質問の答えには成り得ないだろう。
「・・・どうだろうな・・・普通?ちょっと自由な感じ。私のとこではね」
「そっか。いいなあ、高校」
適当な答えであろうとジンは不満を述べるでもなく変わらずににこやかだ。
格好良くて素直で優しい子。
私にはきっと勿体ない。
辺りにいる人の山は、家族連れとか友達同士とかカップルとか、その構成は様々だ。
男はともかく女の人は浴衣を着こんできている人も多く、装いの効果もあってか周りは一様に笑顔だった。
花火大会にわざわざ出向いてきたのに暗い顔をした人間がいるのも怖いけど、夏の風物詩にそこまで興味のない私としてはどう頑張っても心から楽しめそうにはなかった。