第4章 大人の階段
辺り一帯の人の数は大体どこも似通っているが、ゆっくりとした歩調で適当に歩き続けているとジンは私の手を取った。
くっついて手を握ってくるから私もそれなりに応じてはみる。
自然と出てくる仕草が格好いいと思わないでもないけれど、本音を言うと真夏の人肌は結構堪えるばかりだ。
涼しさが恋しい。
そう言えばあの人の指先は温度が少し低かったような気がする。
ジンと手を繋ぎながら、私はしょうもない不良教師の体温をいつの間にか思い浮かべていた。
「今年はもう遊び満喫できるのこれで終わりかなあ・・・」
人の合間を練り歩きながら、ジンは私に聞こえる大きさでそう言ってきた。
これから数ヶ月間、ジンに待っているのは高校受験を控えたストレスだ。
「夏期講習どう?今日は休んじゃって大丈夫か?」
「一日くらい・・・。だってずっと会えていませんでしたし」
私を見上げて、ジンは笑みを作った。
わざとなのか何なのか、中三にしてすでに自分の魅せ方というものを修得している。
ジンのために時間を作ろうという努力をしてこなかった私を責めることもなく、単純な感想として笑顔を見せるジンにはただ小さく笑い返した。