第3章 夏休みのご予定は?
「お前、俺の名前ちゃんと覚えてるか?」
「え?」
「名前。言えなかったらブチ犯す」
「・・・・・・」
この人は本気で教師失格だ。
急な質問を寄越してきたと思ったら、この短時間で二度も強姦を仄めかした。
スマホをいじってる先生が何をしたいのかは知らないが、私は小さく溜息をついて吐き捨てるように言った。
「リヴァイ先生。あなたは教師を辞めるべきだ」
名指しして教師批判を繰り出してみる。
無駄に綺麗な形で口元に狐を描き、私のスマホを手にしたまま今度は自分のスマホを取り出した。
「余計な一言には目をつむってやるが、まあ知ってて当然だろ。一年担当だしな。担当教科は?」
「・・・・・・数学・・・ですよね?」
操作しながら目線をちらっと私に向けてくる。
間違っていたら私の貞操は危ういが正解だと私は知っている。
チッ、と舌打ちされて顔が引き顰った。
「つまんねえな。間違えろよ」
「・・・何がしたいんですか?」
一人楽しそうな先生に置き去りにされている私は、怪訝に顔を顰めて先生の手元を眺めた。
そしてその直ぐ後に操作を終えたらしい先生からスマホを返される。
訝しんでそれを受け取ると、開かれたままのディスプレイには電話帳の画面が映し出されていた。
そこに見覚えのないデータが保存されているのに気付いて、私はもう一度先生に目を戻す。
先生は邪悪に目を細めた。