第3章 夏休みのご予定は?
「俺の番号。消すんじゃねえよ」
あいうえお順のラ行の電話帳欄。
リヴァイという名前がいつの間にやら追加されている。
呆れ返って開きかけた口を閉じることができなくなっている私、先生はさらに追い打ちをかけてきた。
「こっちにはお前の個人情報。俺への嫌がらせで番号変えたら泣くからな」
勝手に泣けばいい。
自分のスマホを翳し、言われたその言葉で先生の目的を理解した。
別段それ自体は構わないけど、やり方がおかしいだろう。
「・・・先生って異常ですよね」
「ああ。お前限定だ」
「嬉しくありません」
先生は笑い、私は脱力気味に非難な目差しを送り。
しかし楽しそうな先生の顔をしばらく目に入れていると、とうとう私も堪え切れなくなった。
声に出さない程度に小さく笑いが込み上げてくれば、果てしなさを思わせる先生の常識はずれな行動もなんだかどうでも良くなってくる。
二人してやる気のない笑みを浮かべ、夏の暑さに当てられて私は自分が狂ったと思った。
先生はまたもや私の頭に手を置いてくる。
どうやら癖だ。
これはこの人の。
「俺からの連絡シカトしたらどうなるか分かってるか」
「犯されると思います」
「正解」
男性教員と女性生徒との間では起こりえない会話が自然と成り立つ。
ここで笑ったらお終いだけど、私と先生は同時に噴き出した。