第3章 夏休みのご予定は?
「レティシア」
「今度はなんですか」
「スマホ出せ」
「・・・・・・は?」
次から次へと妙な話題を投げつけてくる。
先生が今度は何を思いついたのかとうんざりして聞き返したが、突き付けられた一言には反応も一呼吸遅れた。
先生は煙草の火を消して携帯灰皿を仕舞い込んでいる。
「何?今さら没収ですか?」
無くても死ぬほど困るということはないが、あったらあったで便利な代物。
素直に差し出すのを渋って問いかけると、先生は私に顔を向けてすっと手を伸ばしてきた。
スマホを無造作に突っ込んだスカートのポケットに手を掛けられた所で、咄嗟にその腕を掴んで止めに入る。
先生はくすくすと笑った。
「セクハラじゃねえぞ」
「いや、はい。分かってるけどなんとなく・・・。今ちょっと焦りました」
「それは何よりだな」
白々しい顔で、結局はスマホを取られる。
私の許可もなく勝手に画面を覗き込み、何やら操作し始める先生。
どうやら没収ではなさそうだけど、プライバシーの塊を扱うにしては非常識だ。
画面に目をやりながら、声だけ私に向けてくる。