第3章 夏休みのご予定は?
「ねえ、先生・・・」
腕だけ差し出すような格好になって尻込みしながらも、それでもどこか絶対的な危機感は抱けない。
それはこの人の行動、というよりも存在そのものが冗談のようなものだと認識している私の脳が、大丈夫だと勝手に判断しているからかもしれない。
先生を目で確認しつつ、発する言葉には威嚇を含めることができなかった。
「捕まりますよ?」
自分でも呆れるほどの平常心と共に言い放った言葉。
生徒からの真っ当な忠告に、セクハラ教師は破顔した。
「危機感ねえな。もう少しくらい焦っとけよ。お前が慌てるところ一度でいいから見てみてえ」
満足そうに言って、先生は私の腕を放した。
最終目的がどこにあるのか一向に掴めそうにない。
「焦ってますよ。ヤですし私、教師に掘られるとか有り得ない」
「お前も言うことエゲツねえな。何か涼しい顔してサラッと口走ってんだ」
「先生が言い出したんじゃないですか」
先生は自分の行動を棚に上げるのが上手い。
私の彼氏についての悩み相談を強行させておきながら、おかしな方向に話の流れを転換させたのはこの人だ。