第3章 夏休みのご予定は?
「いつだったか教員対象のめんどくせえ勉強会で条例の文言見たな。十八歳未満の相手に対する猥褻行為の禁止だとよ」
「あ、ちょっと勉強してる感じ」
私がささやかに賞賛すると、当然だ、と自信満々に言ってよしよしと頭を撫でられた。
そこまで自慢気に切り返されても困る。
しかしここで止めておけば丸く収まりそうなものを、この人は敢えて教育者の顔を突き破ろうとした。
「猥褻ってトコがいい加減だと思わねえか?どっからどこまでだがハッキリしやがれってんだ。キスは入ると思うか?」
「思います。成立ですね。先生、逮捕」
「容赦ねえな」
いい加減で曖昧な文言。
淫行などと微妙な言葉を当て嵌めるから、後々になって裁判で揉める。
法治国家の抜け穴は、文字の羅列に縛られた茶番劇だ。
頭からは先生の手を払い落とした。
「バッサリいくときはいかないと。変態は増える一方です」
「多いからな、今そういうバカな奴。引っかかる教師もザラにいる」
「・・・・・・あなたの事ですよ」