第3章 夏休みのご予定は?
くすくすと可笑しげに笑う先生。
それを横目で窺い、私はまた壁に背を向けた。
気のせいなのだろうが口内に残った煙たさを感じつつ、先生の指の間に挟まれた煙草を目にして遠くで思った。
私は一生、非喫煙者のままだろう。
「・・・そのバブル名残の女だかって人もそれ吸ってたんですか?」
ゆらゆらと立ち上る白い煙を目線の先で追う。
たいして興味もなく口にすると、先生はいいやと首を振った。
「そこまで感傷的じゃねえよ。コレはまんま俺の好みだ。メンソールは好きになれねえ」
「私は先生の煙草も好きにはなれそうにありません」
「ガキ」
「十五なんで」
咽かえりそうな煙は濃厚に纏わりついた。
いがらっぽい感覚は抜けきらず、恨みがましく先生を見上げると再び頭に手を置かれる。
ボールか何かと勘違いしているのかポンポンポンポンと叩かれ、どうにもうんざりして嫌な顔でその手を振り払うと、退かせようとした私の手を先生が反対に掴んだ。
片方の手では、煙草を口に運んでいる。
直感的に悪い予感がして腕を引っ込めようとすると更に引っ張られた。
「煙草は良くねえぞ。肺は真っ黒になるし依存性は強いし、このご時世に喫煙者の肩身は狭いし」
「・・・・・・は・・・?」