第3章 夏休みのご予定は?
横柄とはこの人のことだ。
言葉も出ない私を見て先生は満足そうに笑い、煙草の箱を取り出して二本目に火を点けた。
一度吸って煙を吐きだしてから、先生は私に目を向ける。
「とりあえず最後まで聞け。未成年だった俺はきっちり法律に縛られて、それまで一度も煙草なんて吸ったことなかった。
バイト先が煙だらけのパチ屋でもな。けどその女は俺の前で吸ってたんだよ、煙草を。
俺が沈んでるベッドに座って、で、そん時俺は初めて煙草の味がどんなもんか経験した」
「は?」
繋がらない話に首を傾げた。
先生の手は私の頬に伸びる。
「こうやって」
こうやって。そう言った直後、先生は私を使って思い出話の再現を果たした。
煙草を口にしたばかりの先生の唇が私のそれに重なり、気づけば口の中に煙のにおいが広がっている。
「っ・・・・・・!」
これは。これにはさすがに目を瞑る。
躊躇いもなく私の口内にするっと入り込んできたのは先生の舌だった。
反射的に身を引こうとすると煙草を持っているのとは反対の手で後頭部を鷲掴み、そのままぐっと引き寄せられて本格的に唇が重なる。