第3章 夏休みのご予定は?
「・・・夢ないの先生です。なんですか、そのネガティブな妄想。人間にトラウマでもあるんですか?ちょっと怖い」
具体的な悲観未来図を語られ、私の体温感度は二、三度下がった。
これはもう人間に対する悪意すら感じる。
嫌な過去があるとしか思えない。
「結婚になるとって話だ。付き合ってる分にはまだいい」
「先生の女性遍歴ってどんなです?」
「聞きたいか?お前にはきっと刺激強すぎるぞ」
不敵な笑みを投げかけられて乾いた笑みが漏れる。
本気か冗談かは定かでないが武勇伝に進展しそうだ。
「やっぱ遠慮しときます・・・」
引き際を逃す前に即座に辞退する。
だけど先生はとにかく楽しそうだ。
ここで先生と初めて会った時から、私はこの人のこういう悪い薄笑みばかり見てきた。
淡々としているのに悪戯っぽくて、ふと大人の顔になったかと思えば無表情を不意に崩す。
読めないというのが先生を示すのに最も近い言葉だ。
何を考えているのかがさっぱり掴めない。
本気で探りたいのであれば、自分の全てを曝け出す覚悟で挑まない限り成功は望めないだろう。