第3章 夏休みのご予定は?
だって、多分、私は。
本気の恋愛と言うものを知らない。
「向いてないんですかね。私には」
自分の中で結論に辿り着き、ぼそっと呟くと横でふっと笑われた。
大人の雰囲気だったそれは途端に色を変え、故意に乱す目的で髪をわしゃわしゃといじくられる。
「やる気ねえな、おい。答えそこかよ結局」
「廃れる前に結婚できればそれでいいんです」
「夢のねえ高校生だな」
ミンミン、ジイジイとセミが鳴き、それに紛れて先生の声が届いてくる。
払っては頭に乗せられる先生の手に呆れ、諦めて冷たさの感じられない壁に背中を預けた。
どうしてこうも人の頭で遊びたがるのか。
理解できそうにない先生の行動をうんざりしつつ受け入れていたが、どうせ今のような話になったのならやはりこの人の事情も覗いてみたいという好奇心が芽生えてきた。
青臭い話が聞ければさぞかし楽しそうなものだけど、流れが武勇伝になりそうだったら即刻止めよう。
「先生は結婚しないんですか?結構いい年ですよね」
「やめろ傷付く。まだ三十そこそこだ」
「そこそこってなんですか。子供いたっておかしくない年ですよ」