第3章 夏休みのご予定は?
「酷いかなあ、私」
好かれて悪い気はしない。
好きだと言われれば単純に嬉しい。
簡単な流れで付き合い始め、けれどその後の行動が付いていかない。
話す必要のないことを口にしてぼうっと前を見ていると、煙草を消した先生が私の頭を横から撫でてきた。
子供にするような仕草で、ぽんぽんと軽く諭される。
「なんとなく、気づくと頑張りすぎて疲れてること多いだろ?」
「・・・・・・?」
先生に顔を向けた。
私が見たのは大人の顔だ。
「似合わねえんだよ、お前に年下は。世話焼きが趣味みてえな人間もいるけどお前はそうじゃない。
そのくせ懐かれれば邪険にはできねえから、その分お前が疲れていくんだ」
そうだろうと問い返され、私は暫く考えてから前を向いた。
初めてこの人から年長者的な言葉を投げつけられ、珍しく格好の付いたことを言う先生を新たに発見する。
そしてそれと同時に、言われたことの意味は私の中にじわじわと浸透してきた。
凄く好きで付き合い始めた、という子ではなかった。
告白されなければただの後輩で終わっていたし、断ろうかどうしようか悩んでいた時、取り敢えず付き合ってみろと周りに散々言われた流れで了承した経緯がある。
真剣に向き合ってこなかった罪悪感は確かにあるが、いずれにせよ面倒臭いことだ。