第3章 夏休みのご予定は?
どうにも煩い。
学校という場所柄、校庭には樹齢のいっていそうな木がずらっと一周植えられている。
昆虫の類にとっての聖地なのだろう学校は、屋上にいても地上の木に止まっているセミの鳴き声が頭に響く。
セミの鳴き声と先生の手と。
ただでさえ暑い中で二重の鬱陶しさが加算され、私は無気力に頭を壁につけた。
横目に伺った先生の表情は穏やかで、暑い暑いと文句を垂れつつ常に涼しげな様子のこの人に内心では溜息が出る。
「長えのか?」
「はい?」
「彼氏と」
「・・・・・・それ聞いてどうするんですか」
私と先生の会話は、そもそも教師と生徒が交わすようなものではないけれど。
かと言ってそこまで親密になった覚えはない。
しかし先生は私に顔を向け、心内の読めない表情を見せた。
「お前よりも十年以上も長く生きてるんだ。人間の扱いの一つや二つ教えてやれる」
「待ってください、なんですかそれ。何教える気ですか。ちょっとホントに発言気を付けた方がいいですよ」
「バカ野郎。なにを想像してんだ」
先生がくっくと笑うのに合わせて煙草の煙はゆらゆらと揺れる。
携帯灰皿に灰を落とすと、先生は煙草を口にして煙を吸い込んだ。
これの何が美味いのかは、私にはどうしても理解ができない。