第7章 勘違い
「まだ俺を拒むか?」
「・・・・・・それは・・・」
「受け入れろ。甘やかしてやるから。泣かせた分取り戻すくらい、一晩中お前を愛してやるよ」
掻き上げた私の髪を梳いて、繋いだ手はぎゅっと握って、静かなブルーグレーで私を見下ろすこの人はやっぱり悪い大人でしかなかった。
「メイリー」
瞼にキスされるのに合わせて目を閉じた。
躊躇いも戸惑いもそこにはない。
ようやく透明になって迷いを消した心地で、この唇に先生の唇が重なるのを感じた。
昼間の学校の屋上で集合して、夜は先生の気まぐれで体を繋げてきた。
そんな関係が終わる。
今日この場でとうとう終わった。
この人は私を甘やかしてくれるらしい。
カラダだけじゃない、何もかも。
私のことを、愛してくれるらしい。
「メイリー・・・・・・」
男の人の声で何度も呼び掛けられ、繋がれた手をきつく握り返した。
深く絡まる互いの指と指。
温かさと内側が満たされる感覚はなんだか苦しくて、閉じた目からは気づけば熱い雫が滑り落ちている。
人前で泣くなんて、早々なかったはずなのに。
一日に二度も先生に涙を晒し、その理由が自分でさえ分からず顔を背けようと横を向く。
けれど先生は涙の落ちた跡に唇を寄せ、目尻に残る滴をちゅっと舐め取った。