第7章 勘違い
「・・・・・・涙線・・・・・・狂ったみたいです」
「そのようだ」
「・・・・・・あなたのせいですよ・・・」
「そうか。それなら・・・償わないとな」
再びされたキスはしょっぱかった。
潔癖のクセに、私のどこにでも平気な顔をして触れてくる。
舌と舌を重ね合わせて同じ味を共有し合い、チュクッと唇が離れたと同時に私たちは囁くように笑い合った。
穏やかに、ゆっくりと流れる。
心地よい。
与えられる、私の居場所。
先生の目はじっと私を見下ろした。
「ようやくだ」
「・・・・・・はい?」
「比翼連理の契いといくか」
なんて不適に笑ったこの人が言ってくるものだから甘い雰囲気なんて続かない。
私が吹き出すのも当然というものだ。
「やめて下さい笑っちゃう。あなたどこのロマンチストですか」
「だな。そんなお綺麗なもんじゃねえか」
「私たちの翼はほとんど汚れきってますから」
「天運だろうよ。俺とお前が同じ場所に寄り集まるための」
「うわ、さっむ。先生さっきからサッッッム。今日テンション高いですね」
「・・・・・・ちっちゃい『つ』三つやめろ」
綺麗な物なんかじゃない。
どちらかと言えば相対するもので、初めて屋上で出会ったあの日から先生は悪い大人で私は悪い子供だった。
同じく汚れた翼同士だ。
羽を休めるその場所は、少し汚れているくらいでちょうどいい。
どうせこの人が愛用している掃除道具でピカピカに磨き上げるだろう。
「何笑ってやがる」
「先生こそ」
繋いだこの手さえ離さなければ。
私たちは多分、明日も明後日もグダグダしながら笑って過ごせる。