第7章 勘違い
「っぷは!」
「色気のねえガキだな」
「ふざけんな!酸欠で死ぬわ!!」
ぜえはあしながら噛みつくも目の前のこの人は涼しげな顔。
キスに応じないお前が悪いとでも言わんばかりの横柄な態度に、私の我慢も限界を超えた。
「いい加減にしてくださいよッ。こっちはまだ頭の中色々な事でグチャグチャしてるんです!あなたの説明がザックリし過ぎてるから!!」
「簡潔な説明と言え。分かり易くて親切だっただろう」
「仮にも数学教師ならもっとまともな説明の仕方くらいできるでしょう!?」
「うるせえな。いちいちギャンギャン騒ぎやがって、犬かてめえは」
舌打ち交じりに悪態づく目の前のこの人。
慎りは臨界点を突破し、このこめかみにはピキッと血管が浮き立った。
そんな私の頭をポンポンと撫でてくる手つきはそれこそ近所の犬を宥めているかのよう。
わなわなと体を震わせ怒りを滲ませていれば、悪びれもせずに顎にクイッと手を掛け間近に目を合わせられた。
「つくづく面白い奴だな。可愛げの欠片もないのに、お前のその目にそそられて堪らねえ」
怖い。
くっくと小さく笑みを零す先生の表情は三百六十度どこからどう見ても悪人でしかなかった。
この人の場合、悪は滅ぶと言う映画界では必須の法則を裏切り、ラストになってもしぶとく生き残って絶対に死ななそうだ。