第7章 勘違い
「待って」
「いいや待たねえ」
「心温まるイイ話で終わっとくべきですよここは」
「残念だったな。生憎俺はハートフルストーリーよりハード傾向なノンフィクションを好む」
「聞いてません。むしろ聞きたくなかった」
「そうか。まあいい、ヤるぞ」
っっっ助けて!!!
私の絶叫が部屋中に響き渡ったが助けに駆けつけてくれるヒーローはどこにもいない。
なぜならここは魔王の城、もとい先生の部屋。
私が逃げ出せる確率は地球に隕石がぶち当たって人類が滅びる確率よりもきっと低い。
詐欺的なイケメンオーラをまき散らした先生に、これまた詐欺的なイケメンボイスで迫られ、シンプルかつ究極的ラブワードを口にされたのが三分前。
本音を語ればこの心臓は一発で撃ち抜かれた。
もっと言ってしまえばもうどうにでもしてほしいとまで正直思った。
だけどそれはほんの一瞬だ。
我に返ってみれば目の前にいるのはイケメンでもなんでもないただのケモノ。
神様だか誰だかが迂闊にもこんな極悪人に与えてしまったモテ要素にうっかり当てられてしまったけど、好きだなんて言うや否が早々にがっついてきたこんな男を一体誰が信じられよう。
沸騰しかけている私のことなんてお構いなしに、早速服に手を掛けられて私はすぐさま現実を見た。
結局ヤりたいだけかよこの人。
私は二度と大人なんて信じない。