第7章 勘違い
「メイリー」
「まっ・・・・・・待って、私いま頭混乱してるというか整理しきれてなくて・・・とにかく待って下さ、」
「待てるかよ。これ以上どうやって待てってんだ」
コツンと額に感じた感触は先生の額が合わせられた事によるもので、離れた直後その場所に軽くキスされた。
恥ずかしい。
尋常ではないくらい恥ずかしい。
どくどく言っている心臓が煩くて止まらない。
こういう、微妙に甘ったるいヤツ。
これは駄目だ。
こういうのが一番困る。
こんな事をされてしまっては、私はどうにかなってしまう。
こんな時に、心許ない精神状態の時に、こんな優しげな目をしたこの人に。
「なあ」
「も、・・・いいです。私の誤解なんですよね。良く分かりましたし、というか別に元々気にしてませんし・・・・・・」
「今さら苦しいだろそりゃ。いいから言わせろ。お前が言わねえから俺が先に言う」
そう投げて寄越す先生は笑っている。
見た事ないくらい、驚くほど優しく穏やかに。
そんな顔をした先生は人の耳元でメイリーと囁き、無駄に好い声に自覚できる程真っ赤になって私を上から甘ったるく見下ろしてくる。
射止められるのなんてここまでくれば呆気なくも簡単だ。
「ガラじゃねえけどな」
「・・・・・・ぁ・・・、」
だってそう、この人は。
「メイリー。・・・・・・好きだ」
悪い大人だから。